人気ブログランキング | 話題のタグを見る

やさと農場の養豚~たいせつにしていること

先日、お味噌仕込みの会があり、今年に入って久しぶりに農場案内をしました。そこで、農場の豚を紹介するにはどんながいいかなー、と思ってまとめたものを載せたいと思います。しかし、説明ばかりの案内だと楽しくないので、実際には、残飯パンをあげてもらったり、ワラを部屋に入れてもらったり、とエンターテイメントを盛り込みながら、タイミングを見計らって話せそうな部分だけ話す、というスタイルにならざるをえません。情報量が多すぎるのも考え物なので、適当な部分を掻い摘んで、ということです。以下、農場の養豚の特徴を3つにまとめました。

1.見学できること
お肉は日常的に食べているものですが、その飼養現場はほとんど見学できません。表向きには伝染病が持ち込まれないように、ということになっていますが、見せたくない、ということも理由の一つにあると思います。養豚の場合だと平均飼養頭数は2000。そこでは人が手で餌を与えたり、掃除をすることはなく、"飼う"というよりも"管理する"という表現の方が近いかもしれません。特に飼養の密度が高い養豚場の多くは、仮に見学が可能だったとしても、見ていて気持ち良いものではないのだと思います。
家畜には人間のように労働基準法や守るべき衛生基準がないので、どこまでも人間の都合(経済性)を押し付けることができます。動物にも権利があり、無理な飼い方はしてはならないよう呼びかける"動物福祉"の考え方でさえ、「豚1頭につき0.6㎡(1m×60cm)は確保しましょう」と、非常に密な印象を受けます。
農場の養豚は、木造の豚舎、外界との接触、自然交配、残飯利用、頭数、など、1960年代の様式(20-30頭の小規模の養豚)でストップしたままになっており、無理のない飼養がどこか牧歌的でもあり、いつでも人に見ていただくことができます。

2.餌
豚は雑食で、人が食べられない残飯やクズ野菜、穀類、草、木の実、土の中の何かを食べてあっという間に大きくなる性質から、古くから世界中で飼われてきました。
家畜は英語で"live stock"といいますが、訳せばズバリ"命の蓄え"(或いは"生きた保存食"(屠るまで腐らない)となり、人にとってどれほど重要な存在だったかがよく分かる表現だと思います。
しかし、飽食の現代においては、そうした切迫感もなくなり、安価なたんぱく源として、あるいはグルメ・嗜好品として大量に生産されています。豚を大量に飼うためには、元々あった、人が利用できない食べ物を与えるという方法ではなく、豚を育てるための餌を栽培することになりますが、そこには様々な問題があります。大量の餌を日本国内で生産することは不可能なので、主にアメリカなどの広大な土地で栽培することになります。単一生産の過度な土地利用による環境汚染、生産性のさらなる向上を図る遺伝子組み換え技術、収穫後の保存に使われるポストハーベスト問題、国内の低自給率問題など、表向きにの安さにひきかえ、こうした様々な問題を生み出すことになりました。
農場の養豚は、茨城県内の農家さんから直接買い受けた小麦、大麦、米のクズを配合したものと、学校給食の残飯、野菜クズ、青草を与える方式で、地域で得られる人が利用できないものを利用するという、昔ながらの飼い方を続けています。こうした餌はまとまった量がある訳ではないので、大規模な畜産では利用できませんが、小規模な畜産では十分に利用が可能です。

3.1頭を分け合う
通常の養豚では、飼い始めて10カ月程度になれば、どの豚も屠場に運ばれお肉になります。それはその時期が肉質、成長速度からみて最適ということです。
一度に何十頭も運ばれた豚はその後、別の流通会社の手に移り、いくつかの段階を経てスーパーなどのお店に並び、最終的に消費者の手に届きます。
農場の豚は自分たちで食べるために、屠場に持ち込んだ後、そのお肉を再び引き取り、小分けにカット処理し、食べたいという希望がある会員さんの元へ届けます。1頭の豚をみんなで分けるために、部位の指定はできず、何が届くか分からないお楽しみ方式になっています。
また、農場の場合、月に1頭しかお肉にしないために、仮に一度の出産で8頭が出てきたら、10ヶ月から出荷を始めて最後は18ヶ月と、お肉として適期に出荷できる訳ではありません。上で説明してきた通り、農場のお肉はグルメのために飼っている訳ではありません。私たちの命の源として大切に育て、私たちの体の一部になるものとして大切に食べる。農場の豚肉を食べることは、私たちの生き方の表明なのだと思ります。しかしだからといって美味しくない訳ではありません。むしろ、豚肉はこんなに美味しいんだと驚くほどだと思います。どれだけ計算された合理的集約的生産よりも、何も図っていない牧歌的な生産物の方が美味しいということもあります。そしてそうした選択肢が現に今もこうして残されている、ということに大きな意味があるのだと思います。 養豚担当 茨木

やさと農場の養豚~たいせつにしていること_c0177665_16165914.jpg

by kurashilabo | 2018-02-24 16:17 | お知らせ(告知)