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ふみきコラム20170819 開拓地近況

 今日もまた雨となった(8月15日)。気温もつゆ時のように肌寒いほどだ。はじめは(夏のカンカン照りに比べれば)体が楽でいいなぁと思っていたもののこれだけ続くとイネが心配になる。昨年は9月にこんな天気が続いてイモチ病が大発生して散々だった。今年はまだ大丈夫だがこの先の天気次第ではどうなるかわからない。

 開拓地のイネは穂もほぼ出そろって、いよいよ登熟の時期に入った。熱い太陽が欲しいところだが穂は小雨の中で花を咲かせ受粉し稲穂となっていく。雨にけむる山間の棚田風景もなかなかいいもの。毎日水をみたり、イノシシの様子をみるために田を回り、また坂の中腹から全体を見まわして悦に入っている。一枚一枚の田によって出来は違うし、今年新しく拓いた田は(長年蓄積の)養分が多すぎて育ちすぎ、先日のちょっとした台風で一部倒伏したが、全体としてみればまずまずの出来だ。
 畔草を刈っていてふと気が付くと、どこから集まってきたのか沢山のアキアカネが舞っている。草刈で舞い上がった虫をねらっているのだろう。赤トンボとはいえまだ黄色に近い。今年は田を造り直し水抜きの水路を暗渠にしたり、パイプで排水できるようにしたのでムシたちが冬越しできる場所がない。そこで2、3カ所あえて水たまりを作ってある。他にも池を作っているから来年にはイモリやら何やらまた帰ってくるだろう。田植えが終わった頃、タガメ(のようなもの)も見た。泥が深く前に進めず確認できなかったのだが、2mほど先にモゾモゾ動いているカブトムシ大の水生昆虫がいた。大きさからすればタガメか大型のゲンゴロウだろう。どちらも今は希少種となっている。また会えたら嬉しい。いろいろなムシと出会えるのも田んぼの楽しさのひとつである。マムシも時々いて、こちらのムシはうれしくはないけど。オオスズメバチもうれしくない。

 イノシシもまた出始めた。春から夏にかけては田には来ないが(今のところ)コメが稔る頃になると田に入ってくる。先日はじめて田に入られた。まだコメは実が入っていないので食害はなく、歩かれただけだったが。即田んぼを網で囲みガードを固める。行動時間が違うので出会うことはまず無いが、至るところにケモノ道と堀り返した跡がある。田に下る道の両脇が一夜にしてユンボで削られたように崩されている。一体何を探しているのだろう。たいしたものがあるとは思えないのに。彼らもまた必死なのである。それだけは伝わってくる。
 先回の週報にもあったように、農場裏でもすでにイノシシ被害はでている。遠からず農場にも侵入してくるだろう。今やイノシシは最も身近なケモノだ。網や柵で囲ったり、仕事が増えるので困りものだが、身近にケモノの気配を感じながらの暮らしは嫌いではない。いやむしろボクはそういう生活を望んできたのかもしれない。部屋には引きこもり猫のババ様がいて、階下の台所にはシロが控えている。外に出ればヤギたちが餌はまだかと眼差しを送ってよこし、馬の竜がいなないてメシを催促する。そして豚や鶏がいて、夜な夜なアライグマ(?)やらタヌキの?が徘徊している。そこにイノシシが加わることになる。それぞれ人との距離や関係は違うが身近なケモノたちだ。そこにあれやこれやのムシやヘビやチュウ太郎などが加わったのがボクの農場のイメージであり、この農場が好きな理由もそのあたりにある気がする。農場はボクにとって自分の身心を野性へとつなげる装置なのである。

 イノシシは「害獣」だが雑草や害虫が農業上の概念であると同じように害獣などというケモノはいない。地面はもともと「天のもの」であるのだから彼らがそこに居て食い物をあさって悪い訳がない。そこを排他的に占有している人間こそが問題なのであり、農業はもともと罪深い営みなのだ。ぎりぎりのところで「駆除」が必要になるにしても、そうした自覚が無ければただただ殺戮となっていくだろう(すでになっている)。殺戮は自らを殺戮者として育てるということだ。そこをよくよく考えなければならない。開拓地は「専守防衛」だが今のところそれで何とかなっている。 S

by kurashilabo | 2017-08-19 15:38 | 鈴木ふみきのコラム