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ふみきコラム20170722

 開拓地の草刈をしていてふと気付くと、春に植えた柿の木がひとつ芽吹いていた。近所の友人が「もらったから植えないか」と持ってきたものである。3本ばかりもらってはみたものの、根に土は全くついておらず、細根もほとんど無いので難しいかなと思ったが開拓地の一角に植えておいた。植える時に十分な水をやったもののその後先日の台風による大雨が降るまで全くのカラ梅雨だったのでほとんどあきらめていたのである。(残りの2本はやはり枯れたようだ。)台風の雨で生気を得たのであろう、その芽吹きを見ていたら訳もなく気分が良くなってきた。この暑さ、アブやブヨ、部屋に帰ればノミやGに悩まされ総じて不快で鬱な日々なのでこういうのは嬉しい。

 5月から6月にかけて田植えした稲も力強く分けつし、ぐんぐん育っている。(強湿田で、田植え前の荒起こしや代掻きができず、そのまま田植えしたところはやはり草に敗けていて育ちが弱く、色も出ない。)先日は農場総出で草取りをした。コナギ、イボクサ、ミゾソバなど手取りし畔に投げ、また泥に埋め込んでいく。暑い最中のこうした除草はやはり若い人でないとできない。小生は幸いにも高齢者といわれる人種になり、腰も痛いので手取り除草は免除してもらっている。それに代わってポツポツバラバラと生えるコナギを歩きながら棒で泥に埋め込むという除草法を開発した。足許のコナギは足で埋め込み、少し離れたところコナギは2メートルほどの竹の棒で埋め込んでゆく。これで8列くらいを除草できるので案外効率が良い。腰を曲げないですむし、稲の葉で顔や肌を刺すこともないので多少楽だ。(ただしこれはある程度育ったコナギにしか対応できない。)来年のことを考え、コナギは少しでも密度を下げておきたいのである。
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 暑い夏は緑の軍団が旺盛を極め、人間は基本、防戦だ。きれいにしたはずのところもたちまち草やツルに埋もれ、刈り倒した竹のあとは切っても切っても次から次へと新しい竹が生えてくる。彼らは休むということがない。一方人間はどうしても作業量は減る。緑の軍団を前にすればとりわけ高齢者の作業量などわずかなものだ。草刈り機や重機がなければほとんど無力といってもよい。夏は嫌いだが稲を育てる力もまたその暑い夏であるのだから、稲と共生してきたモンスーンアジアの民としてはこの暑さを受入れ、感謝しなくてはならないだろう。

 暑気を払うには何といっても「川床」が一番だ。昨年は橋の下に作ってアブの飛来に悩まされたので今年は場所を変えた。沢の奥の幅がやや広くなったところで、沢の中、水上20センチに床を作り昼寝している。沢の中なのでアリなど虫は来ないし、暗いのでアブも来ない。時々ヤブ蚊がくるがこれは蚊取り線香1本で防ぐことができる。ゴロリと横になって上を仰げば、イヌシデの大木が枝葉を広げ、そこにツタがへばり付いて葉を広げ、更にヤマフジの大木がからみついて葉を広げている。緑のドームである。東側はシノ竹が日を遮って暗い。川面を流れる風が涼を運んでくる。夜ならば不気味で立ち入れないが昼間は存外明るくて何の危険もない。昼はイノシシもやってこないし。横になって沢音だけに心を集中していると暑気が引くとともにウツラウツラと寝てしまう。昼間セカセカと働いている人には「申し訳ないけど気分がいい」。夏は思考がどんどん即物的、肌感覚的になっていく。 S

by kurashilabo | 2017-07-23 10:07 | 鈴木ふみきのコラム