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講座「開拓村の作り方」とマイ小屋づくりへのお誘い

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 私たちは今、筑波山の直下、石岡市小幡十三塚集落の近傍で耕作放棄された谷津田の「再開拓」に取り組んでいます。山あいの、一枚が一畝とか三畝という狭い田が百数十枚階段状に連なった谷津田です。全部で3haほどの面積があり、40年ほど前までは周囲の里山共々隅々まで耕作され利用されていました。しかし1970年に始まった減反政策以後、全国の中小の谷津田同様耕作放棄が進み、20年ほど前からはほとんど耕作されなくなり、かつての道や水路や畔は消え、葦やイバラが密生し、あるいはシノ竹の密林となってそこに葛や山藤がからまるという人を拒絶する原野になってしまいました。夜ともなればイノシシの天下となり、至るところケモノ道が走り、土が掘り返されている状態です。

 3年前、そこに立った時の第一印象は「こんないい所をどうして放棄してしまうのだろう。」というものでした。まわりは山で静かだし、上流に人家が無いので水もきれいで、脇には筑波山からの沢(長峰沢)が流れています。(最初は沢に近づくこともできず、沢音だけでしたが)。「ここは手を入れれば素敵な場所になる」と確信し「やつだ開拓団」というイベントを組み、開拓を始めました。ノイバラに悩まされながら葦を刈り払い、シノ竹を切り倒し、道や水路や畔を再建し、田の水平を直し、昨年(2016年)はじめて1.5反ほど作付けし、猪を防ぎながら300㎏ほどの米を得ました。残念ながら昨年はイモチ病が多発し、収量も味も不満足なものでしたが、この谷津田での久しぶりのお米です。

 米作りとしてみれば、このような田はあまりに生産効率が悪く、早々と耕作放棄されたのも頷けます。しかし農業生産という見地を離れて21世紀の基本課題である「自然と共生する暮らし」という観点でこの谷津田を見直すと潜在的可能性にあふれた実におもしろい場所であることがわかります。きれいな水も田も畑もあり、周囲の里山には様々な木や竹があり、景色もいい。生活の基本素材は何でもあるのです。この場所のもつ可能性を形にしてみたい。それができればここは私たちのフロンティアになるのではないか、そんな気持ちです。言ってよければワンダーランド、「オモシロソー」ということです。
 しかし「オモシロソー」だけでは人々を開拓にお誘いすることはできないのでそこを以下のような「コトバ」にし、講座「開拓村の作り方」というカリキュラムを組んでみました。

 講座は年4回開催し、それに加えて、「マイ小屋作り」を提案しています。筑波山麓の里山と谷津田を舞台に様々な角度から田舎の見方、遊び方を提案していきたいと思います。


自然とつながる身体技法を身につける、内なる野性を取り戻す

 開拓は人間の最もベーシックな「生きる力」を必要とし、また鍛えてくれます。遠い昔、人が遊動生活を止めて定住を始めた時、まずしなければならなかったのが開拓です。木を伐り小屋を建て、火を起こす。道を造り、井戸を掘り、水路をうがつ。土を耕し種を播き、動物を飼い慣らす。草や木や鳥や小さな虫を見分けて名付けてみる・・・。このようにしてそこに出現する開拓空間から人間の文明化はスタートしたのです。

 開拓はヒトが人間になるという行為そのものでしたが、同時に自然界の異端児として立ち上がるということでもありました。良くも悪しくもそこには人間とは何か、自然との対立と和解というテーマが最もプリミティブな形で開示されています。

 しかし開拓時代はすでに遠くに去り、現代人は都市空間に生きています。そこでは野性の身体技法は必要とされません。そこは便利で快適かもしれませんが心身はやせ細っていくばかりです。現代を生きる人にとって開拓は自然とつながる身体技法を身につけ、かつまた内なる野性を刺激し身体の自然力を取り戻す訓練になるでしょう。半野生を生きていた子供時代に戻ること、それがオモシロクない訳がありません。最高のアソビであり自己教育になるのです。

昭和前期の暮らしをしてみる

 私たちは「開拓地」でひとつの「暮らしの実験」を行います。自給的な暮らしです。自給とはとの土地の産みだすもので生活するということです。米や野菜、味噌といった食べ物(を手に入れる)だけでなく、日常の煮炊きや暖房のエネルギー(炭や薪)、小屋を建てる材料、食品残渣や糞尿の利用等々です。
 しかし「その土地の生み出す資源で暮らす」これは実は1950年代、昭和30年頃までは田舎の普通の暮らしでした。そのような意味でこれは昭和前期の暮らしの再現と言ってもいいと思います。
むろんすでに市場経済に組み込まれ、文明の利器は沢山入っていましたが、その頃までは自給経済圏ともいうべきものがまだ生きていました。アメリカのアーミッシュは厳格に近代以前を生きていますがここでは昭和前期がテーマです。

 1960年代以後、私たちの日常は激変しました。生活の何もかもが近代化され、「お金」さえあれば便利で快適な生活ができるようになりました。「大地から離陸し自由を得た」と言ってもいいでしょう。田舎に行ったところで兎追いしかの山や、小鮒釣りしかの川などどこにもなく、そんな子どももいません。しかし現代ではそうして得た自由が必ずしも人々に幸福をもたらさなかったことに多くの人が気付いています。心も体もむしろ貧しくなってしまったという気分です。昭和30年代の暮らしが郷愁と共に呼び出されるゆえんです。
 暮らしの実験としてであれ、昭和前期の暮らしの再現は現代をどう生きるかについての多くの実践的示唆を私たちに与えてくれるでしょう。

谷津田の風景を復元する

 私たちの開拓は里山と谷津田を舞台にして行われます。現在では立ち入る人もなく草木の繁るにまかされている「ヤマ」や谷津田はかつては生活資源の大半を生み出す暮らしの土台でした。また歴史的にみても谷津田は広大な沖積平野の田に先行する古い歴史を有しています。それは「常陸国風土記」の「夜刀(ヤト)の神」の話にある通りです。

 谷津田には単なる郷愁を越えて列島に暮す人々の「原風景」として人を引きつける何かがあります。その美的な谷津田の景観を復元してみたい。幸いにして私たちの「開拓地」は山や竹林や沢に囲まれ手を入れれば美しい場所になると思います。風景のもたらす教育力、治癒力、そういうものがあるのではないでしょうか。

二拠点生活の勧め

 私たちはこうした活動を都市民とともに進めたいと考えています。都市部に普通に生活する人にとって耕作放棄された谷津田や「開拓」など頭の片隅にものぼることはないでしょう。ましてその最もマイナーな場所がおもしろい可能性を秘めていることなど思いも及ばないはずです。私たちはこの「磨けば光る」ワンダーランドへ彼らを案内したい。開拓の楽しみをできるだけ多くの人と共有したいと考えています。

 必ずしも「田園回帰」する必要はありません。それもひとつの選択肢ではありますが、ここではむしろ2拠点生活、複眼的スタイルこそを勧めたい。都市民でありつつ田舎の人、あるいは田舎の人でありつつ都市民という選択です。そのようなスタイルにこそ新たな感性と思考は孕まれるのではないかと考えます。私たちの開拓地はその「田舎の拠点」として開放されていくことになるでしょう。
また土地を快く提供してくれている地主さんや地域の人たちにも開放したい。彼らにとっても昔懐かしい風景は憩いの場所というだけではなく地域の再発見となるはずであり、新しい人を呼び込む「観光資源」にもなるでしょう。

 このようにして人と自然の織りなす「里山と谷津田」を舞台に「時々開拓民」、常駐スタッフ、先住民のゆるやかなコミュニティができれば、それは人生のセーフティネットというだけでなく、私たちの懐かしい未来、新しいふる里となっていくことでしょう。

人類史の身体的復習として

世界は混迷を極めています。中世的問題、19世紀ないし20世紀的問題、21世紀的問題がからまりあいつつ同時多発しています。政治の荒波が私たちの足許をさらっていくのではないかという不安。しかしそれはそれ、私たちは目の前の小さな「人類史的課題」を着実に進めるしかありません。飛躍を承知で一言でいえば、私たちの開拓は人類史の、はたまた日本史の身体的復習です。

「講座・開拓村の作り方」へようこそ。
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筑波山直下、石岡市小幡十三塚集落の近傍にある谷津田。四十数年前、耕作放棄地となったこの場所に、ふたたび暮らしのいのちを吹き込む。この挑戦はまさに開拓そのもの。

根っこから暮らしを考え体感する 年4回の“開拓”講座

■講座概要
(各月の講座内容は天候や諸事情で変更される場合もあります)

4月 
15(土)オリエンテーション、開拓地案内、シノ竹刈払い作業 等
16(日)ヒノキの間伐と運び出し、皮むきなど、小屋建築の候補地見学

5月
27(土)開拓地の谷津田見て歩き(動植物、生態系)、田んぼキャンプ
28(日)筑波山遊覧(筑波山の自然、ブナ林見学、修験の遺構 等) 

10月
7(土)山歩き、林業体験、これからの山の利用、ディスカッション
8(日)製材所見学、自力建築の御宅訪問、夜:やさと農場の建築思想
9(祝日)ジオパーク十三塚(周辺の地質学的歴史的散策)

1月
6(土)畜産の現場見学、夜:屠畜や食に関する映画鑑賞
7(日)狩猟・解体見学(予定)、夜:対話
8(祝日)鶏のトサツ・解体体験

<募集要項>
・集合時間 土曜日の11時集合、最終日は16時解散(予定)
・募集人員 10名(最小催行人数4名)
・参加料 4月、5月 各回15,000円
     10月、1月 各回25,000円 
※参加料に宿泊費、食費、講座代、保険代が含まれています。
※講座中のケガなどについては、保険の範囲内での対応とさせていただきます。
※通年での申し込み(80,000円)者には、下記の「小屋作り」の年間利用料60,000円が免除されます。


■開拓指導
鈴木文樹(開拓者/当農場スタッフ)
茨木泰貴(鶏トサツ指導/当農場スタッフ

■外部講師 ※名前順
清水雅宏氏(つくばね森林組合)
永田まさゆき氏(アトリエ・オン/やさと農場設計)
矢野徳也氏(筑波山ジオガイド)
※他にも数名予定しています。決まり次第お知らせします。


■申し込み方法
1)以下のフォームから、必要事項を記入して送信してください。2~3日以内に事務局から確認メールをお送りします。メールが届かない場合はkurashilabo@gmail.com にお問合せください。

http://bit.ly/kaitaku

2)以下の口座に参加費をお振込みいただいたら申し込み完了です。
【振込先】
ゆうちょ銀行口座間 00390-0-17509 クラシノジッケンシツ ヤサトノウジョウ
銀行から振込 039(ゼロサンキュウ)店 当座 0017509 同上

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■これまでの歩み
開拓団2016の活動レポートはこちら
 http://yasatofarm.exblog.jp/i30/
十三塚の開拓地の2015年の様子はこちらで見ることができます。
 http://kaitakudan.strikingly.com/
 

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■「小屋作り」のススメ

手近にある素材で作られた「巣」、私たちの開拓地でいえば間伐材や枝葉、竹、シノ、石などで作る「穴ぐら」、身を横たえ安心して眠ることができる場所。それが小屋。床をつけ、窓を作り、空間を押し広げてテーブルやイスを置けば少し住宅に近づく。大事なことは自分の頭と手を使いそこに自分の空間を切り出すということ。小屋は日常に隔された子どもの自分に帰る場所。週末はそのような小屋に憩い、田や畑を起こし、開拓を遊ぶという生活スタイルの提案。車の駐車場を持つように、山里に自分の小屋を持つことで拡がる暮らし。

開拓地に、自分用の小屋を作りませんか?

〇年間利用料 60,000円(開拓地の管理費に充当)
講座に通年で参加する人は、当年は利用料不要です。次年度以降は利用料が必要となります。

〇利用条件
基本的に自分(家族、仲間)で作ること
使わなくなったら原状回復すること

詳細はお問合せください。

mail kurashilabo@gmail.com
TEL 0299-43-6769(担当 鈴木)
※電話は昼の12時~13時半ごろがつながりやすいです
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by kurashilabo | 2017-02-23 17:46 | お知らせ(告知)