2016年 08月 13日
ふみきコラム 開拓日記 夏
農場の田は今年は「農林48号」(通称ヨンパチ)を使っていて、これはやや晩稲なのでまだ出穂はしていない(チラホラあるがこれは多分別の品種のまじり?)。全体としてみれば梅雨も明けて高温になったのでグングン勢いがつき分けつも増えてきた。こういう時の稲は本当に力強く、見ていて気持ちがよい。
「開拓地」での米作りは今年が実質初年度なので予想外のことも多い。一面アシで湿地だったところはアシの地下茎を抜いているわけではないので雑草としてのアシに悩まされるだろうと予想していたがこれがほとんど出なかった。菖蒲が一面に生えていた部分もその根茎はそのままに田植えしたが思ったほど悩まされはしなかった。また一面シノ竹で乾いていたところは水漏れに悩まされるだろうと予想していたが全くもれない。これもありがたい予想外である。
ありがたくない予想外もある。湿地状のところはトラクターなどで耕すということができなかったので表面を軽く反転させる程度で代掻きをし、田植えをした。それしかできなかったのだが、そうしたところの泥が「浮いてしまった」のである。 これははじめての経験で、基盤の土の上に水の層があり、上から一見土のようなところは軽い土が浮島状態になっているのだ。だから水を入れてもその土の層が浮き上がっていくばかりで水を張れない。言葉は悪いがドブにブクブクと泡が湧き、表面に分厚く汚物の層ができているのを見たことがあるだろう。それと同じで田はブクブクと泡立ち、稲をもって引っ張れば「泥土」の層が波打つ、そんな状態。
なぜそうなったかというと(推測ですが)湿地状態だったところは耕作されていなかった30年分の有機物(アシやその他の草や木の茎葉)が嫌気状態で保存されていて(分解されないので)いわば泥炭状の植物堆積層だった。そこをかきまぜたのでブクブクとメタン発酵し、泡の浮力もあって浮いてしまうのだ(もともと植物質が多く軽いし)。そんな浮島状態の田でも稲はよく育っているのだからたいしたものである。また30年分の有機物が入っているから養分が過多気味で稲の色が濃い。これが米の味にどうでるかというのも心配なところである。
今年は梅雨の期間も含めて雨が少なく、「高松田」の方は渇水で悩まされている。しかしこちらの田には水は十分にある。筑波山から流れ出る沢水は涸れることがない。どこから湧き出してくるのか本当にありがたい。(多少は少なくなっている) 沢に掛けた「川床」で汗が引くのを待っていると目の前を何匹ものオニヤンマが滑空していく。こちらのことは目にも入らない様子で。そして時々水に尾(?)つけて卵を産み付ける。道を歩けばアブラゼミがひっくり返ってもだえている。夏も今が峠だ。盆を過ぎれば秋風も吹くだろう。葛の花も一斉に咲き出し甘い香りを漂わせて来る。それを深く吸い込んで幸せな気分になる。 S

