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開拓日記 2016年3月5日

 「開拓地」では現在ふたつの作業を進めている。ひとつは苗代の準備だ。4月の頭に種を播くのでそれまでに苗代用の田を用意しておかなければならない。先の土日に「開拓団」の人たちと一緒にまず去年復活させた水路を直し、田の畔を盛り、排水路の泥さらいをしてなんとかまた田んぼらしくなった。沢からの水の取入口はパイプも水路も砂で埋まっていて大変だった。大雨になると沢の砂が大量に流入してしまうのだ。
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 いまひとつは道作りである。開拓地は今のところまともな道がなく車を入れることができない。(あるにはあるのだが、大変使いにくい)。それで西側の山の斜面に200メートルほどの新しい道を造成しているのである。将来のことを考えれば自前の道が必要だ。重機(ユンボ)を持ち込んで斜面を削ったり土盛りしたりしながらS字状にくねくねと下っていく。「ボクの前に道はない、ボクの後ろに道はできる」で楽しい作業ではあるのだが、急カーブになるところはどうしても傾斜がキツクなりがちで難しい。今日、やっとのこと重機を一番下まで下ろした。その先が難所で、4メートル位の崖になっており、そこを切り通しつつ土盛りして沢に出なければならない。しかも孟宗竹が密生していたり、廃マルチ(ゴミ)が沢山捨ててあったりでやっかいなのだ。その沢を越せば開拓地に出るのだがそのためには橋を架けなければならない。水流は2メートル幅くらいなものだが橋を架けるとなると5メートル位になる。金をかけずにどうやって車が通れる橋を架けるのか、あれこれ思案しているところだ。

 道を造っているところは竹林のキワであり、いまや竹林に飲み込まれつつある場所なので、地面の中には縦横に地下茎が走り、あちこちに孟宗竹が生えている。掘り進めるにはブチブチと地下茎を断ち切り竹は切り倒して片付け株を抜かなければならない。地下茎はまだしも株の抜き取りは予想外に大変だ。びっしりと強靭な細根をまわりや地下深くに伸ばしていてビクともしない。重機でまわりから掘っていくしかない。しかし考えてみればあれだけの背丈がありながらどんな強風にも倒れることがないのだから株元が軟弱であるはずがない。

 そんな場所なので、掘っていると地下茎と一緒に小さなタケノコを掘り出してしまうことがしばしば。はじめのうちは「ラッキー!」と拾い集めて持ち帰ってきたのだが、ゆでたり皮を剝いたりが面倒なので誰も料理に使わない。何でもありがたがられるのは始めだけ。今日もいくつか出たがそのまま埋めてしまったり放り出しておいた。夜にイノシシたちが「ラッキー!」と喜ぶことだろう。すでにイノシシたちは夜な夜な竹の子を掘っているようである。朝見るとあちこちに掘り起こした穴があり、竹の子の皮が散らばったりしている。まだ地中深くに小さく縮こまっている竹の子をどうして見つけることができるのか驚くばかり。その嗅覚や恐るべし。西洋では土中のトリュフ捜しに豚を使うと聞くがあの鼻はダテではないのである。

 毎日山の方へ「出勤」し、一人でそんなことをしていると時々とても不安になる。一体オレはこんなところで何をしているのか?何といういうバカなコトを始めてしまったのか。しかしそれも一瞬のことで、重機に乗ってエンジンをかけパコパコとやりだせばもう「土掘りハイ」になって自分の脆弱な身体や精神ことは忘れてしまう。今は何も考えないことにしよう。作業をコツコツ進めることが道を切り開く。  S 
by kurashilabo | 2016-03-05 15:40 | 鈴木ふみきのコラム