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ふみきコラム「高松たんぼ」

 今年は(から?)“高松田んぼ”の地元世話人のようなことをやっている。高松田んぼとは旧たまごの会の創設者の一人である高松修氏が1980年代に始めた米作りで、彼は35アールほどのその田で様々な農法を試していた。ザコ(雑魚・フナ・モロコなど)による除草、レンゲ農法、深水管理などなど。いつのことだったかもう忘れてしまったが、彼が元気な頃、田のアゼでそのウンチクを拝聴したことがある。その中味はすっかり忘れたが、子どものような得意げな顔と話しぶりはよく覚えている。不幸にして2000年に亡くなられたが、彼の遺志を継いだ人たちが高松グループとして米作りを続けてきたのである。自主耕作とはいえ、メンバーは皆都市居住者なので地元で世話をする人(田起し、代かき、育苗管理、水管理などなど)が必要で、それがめぐりめぐって農場に声がかかったのである。
 高松氏は80年代初頭のたまごの会の分裂の時、“契約派”の頭目の一人だったから(結果として分裂に至る“大ナタ”を振るった張本人である)農場とは縁がないと思っていたので少々意外であった。しかし考えてみれば高松氏を知っているのは農場ではむろんボク一人だし、高松グループの中でも面識のあった人はもう少なくなっているそうだからそんなことはもう誰も気にしていないようである。昨日はこれもたまごの会から分裂した“たまご米を作る会”(今は名前が変わっている。が知らない)の三角氏がひょっこり農場にやってきて「苗床にヒエが多く苗が足りなくなりそうなのだが余ったらまわしてくれ」という話であった。気がつけばボクも含めてもう皆「高齢者」であり、高齢者になると世俗の因縁は薄れていくもののようである。

 さて、農場の田んぼはイバ氏が中心になって若い人たちがやっていて、腰痛持ちで弱体のボクはパスさせてもらっている。それでボクにとっては久しぶりの田んぼなのだが、これが畑と違って新鮮で楽しんでいる。ヒマでもないし体調も思わしくないのにそんなことを買ってでるのだから結局好きなのかなぁ。ただ、基本的に高松グループの人たちの米作りであり、田植え、除草、稲刈りなどハードなところは彼らがやるので気楽ということもある。

 田んぼというのは要は水遊び・泥遊びである。水路をせき止めて水を入れたり、こっちの水をあっちにもっていったり、水の抜ける穴を探してふさいだり、水と泥の中で代かきしたり。どじょうやザリガニ、タニシがいたり、カエルやヘビがいたり。時折、カモやサギが飛んできたり。むろん収量や効率を競う“稲作”という業界はある。産業の一分野としての稲作である。しかし高松田んぼもそうだがボクらの米作りはそういう意味では稲作とか農業とかいえるものではない。田んぼを使っての水あそび、米作りというあそびであり、それでいいと思っている。そう思い切れば、米作りは実に楽しいワールドなのである。 S
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by kurashilabo | 2014-06-05 11:25 | 鈴木ふみきのコラム