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ふみきコラム 開拓日記③

歴史から抜け落ちた、耕作放棄地の時間を起動する

 その「開墾地」に至るには普通の道路から枝分かれした脇道を100メートルほど下らなければならない。この道がいかにも狭い。しかも下り坂で左側は崖だ。一部簡易舗装がしてあるとはいえ軽トラックで通るたびにヒヤヒヤする。雨の日やその直後は怖いのでその手前で車を止め歩くことになる。普通車は入れない。その坂を下り、沢にかかる石橋を渡ればあとは荒れた耕作放棄地が続くばかりだが、ボクたちが借りている場所はそこから更に100メートル位先である。道らしいところもあるが、地図では(地積図)道は途中で無くなっていてただ使っていたと思われるところを登っていく。草は刈ってあって歩くに苦労はないが、至るところイノシシが掘り返したあとがあり、ヌルヌルとすべり、現状では軽トラも通せない。

 その地を長く使っていくのであればこれではいかにも不便なので別の進入路はないものかと地図を眺め、数日周辺を歩き回っていた。しかしやはりどこにもない。畑と違って谷津田はヤト(谷)にあるので両側は山だ。50年位前までは使っていたと思われる道は途中で崩落していたり、消えていたりで使えない。それに昔の道は車のことは考えていないのでそもそも狭く、下りが急すぎる。新しく道を作るには地権の問題がある。沢に橋をかけるには水利組合の了解も必要となる。さてどうしたものか。

 今日、新しい「田であったとおぼしき場所」を「発見」した。先日借りている田に水を引く水路の元を探してシノやイバラをかきわけながら沢の奥の方に分け入った時、アレ?と思う場所があった。地図ではそこは山だと思っていたのだが、夜グーグルマップで見るとやはり田である。むろん現状はシノ竹やイバラの原野だが田であったところは皆そうなっているからわかる。今日、今度は山の上のほうから藪をかき分けて下り、その場所を確認した。狭いとはいえ2反歩(2千平方メートル)くらいはある。驚きだ。まわりのどこにも道はなく、山とヤブが人を寄せつけないのでよほど意志して分け入る人でなければそこは見ることさえできない。そしてそんな人はまずいないから誰も見ることがなかった場所。

 耕作放棄地は歴史から抜け落ちた場所であり、そこでは時間が止まっている。一人で坐っていると本当に静かだ。その静かさは音が無いということではなく時間が止まっているから。それは死や自然の属性だ。人はことばを使うことによって不可避的に時間を生きてしまう。だから死も自然も直接には触れることができない。「耕作」という人為の痕跡を残しつつ「放棄地」であることによって限りなく自然に還りつつある場所、そこは自然自体よりも余計に死と自然を想起させる。それが耕作放棄地の不思議な気配であり静けさなのだろう。ボクらはそこを再び人為の側に呼び戻そうとしている訳だが人が動けば時間も起動する。静けさは去るだろう。そがはいいことなのかどうかはわからない。しかし人間はそのようにしか生きれない。少なくとも「文明化」された人間は。

 いや、道の話しだった。考えた末、山の中を通る古い道を整備して使うのがやはり一番いいだろうと思い至った。一部崩落しているところはう回路を作るしかない。愚行の第一歩として?  S
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by kurashilabo | 2015-02-28 16:58 | 鈴木ふみきのコラム | Comments(0)

農場の野菜セットを購入しませんか

やさと農場では完全無農薬・無化学肥料の新鮮なお野菜をセットにしてお届けしています。季節ごとにかわる旬のお野菜を食べてみませんか。おためしでとってみたいという方も歓迎です。

c0177665_14142263.jpg■ファミリーセット 3,640円
季節のお野菜10種程度と平飼い卵10個(4~5人向け)
■レギュラーセット 2,600円
季節のお野菜10種程度と平飼い卵10個(2~3人向け)

*送料は+530円です。関東以外は別料金になります。
*平飼い卵はお好きな量で追加できます。1パック400円です。
*豚肉も購入出来ます。2200円/1kgです。発送にはクール代金が別途かかります。
*お届けは土曜日になります。収穫・梱包・発送は金曜日に行います。
*4月、10月など年に数回端境期のため、野菜の量が少なめになりますのでご了承ください。

<注文方法>
注文フォームからお申込みいただくか、電話、ファックス、メールでも受け付けております。電話・ファックス・メールの場合は、お名前、ご住所、電話番号、ご希望のセットをお伝えください。その後こちらから、内容の確認のご連絡を差し上げます。

■定期便にてお取りいただく場合は、暮らしの実験室の会員になっていただく必要があります。年会費12,000円で、毎月1,000円ずつお支払いただくか、年会費としてまとめて支払うことができます。

*会員特典
・お野菜セットが1セット500円引きになります。(両サイズとも)
・農場の日帰り利用料1,500円が無料に、宿泊費利用料3,000円が1,000円になります。
・会員限定イベントなどの情報が届きます。

■初めての方には、代金を先払いしていただいています。振り込み確認後の発送になりますので、お時間がかかる場合がありますが、ご了承ください。振り込み手数料はお客様負担にさせていただいております。
定期的に購入される場合の請求は、月末締め、翌月の請求になります。

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by kurashilabo | 2015-02-19 14:33 | 野菜セットのご案内 | Comments(0)

ふみきコラム 開拓日記②

 先の2月14、15日、いよいよ開拓が始った。例の筑波山直下の耕作放棄地である。今年取り組むのはその谷津田の一部、4.7反(約4700㎡)だ。普段はめったに人の入らない(入ることのできない)湿地に十数人がキャピキャピと踏みこみ、草刈り機6台をうならせて、葦、イバラ、篠竹を相手に奮闘した。もっとも「開拓団」と銘打ってはいるものの、農場のスタッフを除くと草刈り機を使うのは初めてという人ばかりで草刈り機講習会のようでありましたが。予想していたことではあるが、イバラが難物だ。葦は切り倒すだけなら楽だ(問題は地下茎をどうするかということ)。篠竹も専用の歯に替えれば刈り倒すことができる。イバラも切ることはできるが棘があるし、枝がくねくねとからみ、長く伸びてブッシュとなっているので大変だ。しかし少しずつ視界が広がっていくと気分が乗ってきてもう少し、もう少しとやりたくなる。これはしょうがない人間の性(サガ)なのであろう。人間は静かにしていることができない。人の手が入ることがなくなって30年、自然に還りつつある地にワサワサと騒音をまき散らしながら踏み入っていることにどこかしら後ろめたさがある。ボクたちが来なければ静寂そのものの場所であるのに。
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「開拓団」は社会的には「耕作放棄地の再生」ということになるのであろうが、ボクはそれにほとんど関心がない。耕作の必要がなくなればそれを放棄し、自然に返すのは悪いことではない。大地の隅々まで耕作しなければ生きられなかった時代は去ったのだ。(たとえ食糧や飼料が十分輸入できなくなったとしても) そもそも耕作放棄地の再生も里山の再生もできる訳がない。点としてはできても面としてはできない。どちらも広大な面積があり、里山など農地よりずっと広いのだ。経済の構造が変わってしまった以上、それをとり戻すことはできない。人はコンパクトに暮らし、余分は自然に返していく、それでいいし、そういう時代に入りつつあると思う。

 ボクが耕作放棄地に目をつけるのはそういうことではなく、そこに自由に使える場所、空間が出現しているからである。半ば無主の地。その昔、昭和30年代まではあったという都会の中の空き地、広場、所有者が確かにいるのだが誰もが入りこんで遊んでいい場所、そんな気分である。1町歩(約1万平方メートル)を越す、水もきれいで景色もいい場所を自由に使えるのはそこが耕作放棄地だからこそなのだ。むろん丁寧に手順は踏んでいる。地主さんと契約をかわし、農業委員会に提出し、隣接する農地との境界をその地主さんと確認し、不明であれば図面(地積図)をもとに測りなおし…。どれも面倒ではあるが、大半の地主さんは(農地を荒らしておくことにどこかしら後ろめたさがあるのだろう)農業に使うということであれば好意的に対応してくれる。無下に断ったりはしない。そういう手順さえ踏めば広い場所を自由に使えるのである。こんなことができるのは農地だからこそであり、地主さんもおそらくほとんど意識していないが、そこに農地が元来持っている公共性というものが顔を出しているのだと思う。ボクはそこを「いつのまにか進めてしまう農地解放」と言っている(大きな声では言わない)。 

 解放された農地をどう使うかはこれからのことである。米を作ると言いまわっているがそれはとりあえずの看板で、一番通りがよいからだ。むろん米は作るが、ガンガン「農業」をやりたくはない。それではあまりに能が無い。半農半自然くらいでいいし、人の暮らしも含み込んだビオトープのようなことを夢想している。
 今日もまた現地に出掛け、山に分け入って道を探したり、ヤブこぎしながら境界のクイを確認したり、「オレは一生こんなことをして終わるのか」と雨上がりの山を仰ぎみたりした1日でした。 S


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by kurashilabo | 2015-02-14 12:22 | 鈴木ふみきのコラム | Comments(0)

ふみきコラム 開拓日記①

 耕作放棄地を再生すると補助金がもらえるということを聞いて、先日役場にそれがどのような制度なのか聞きに行った。すでに何度かここでも触れてきたが、農場では今年から筑波山直下の荒廃した谷津田を4反ほど借りて再「開拓」することになっている。財政が厳しいので多少なりとも補助が出ればとの思いである。補助金には国の制度と、市の制度があって、国の制度は4月になってから申請してその後現地調査があり、許可が下りるにしても来年からで、それまで一切、手をつけてはいけない。作付してからも申請通りに使われているかどうかチェックがあり、そもそも国は米生産を増やしたいわけではないから申請が通るかどうかも怪しい。ということで市の制度ということになるが、これは確かにスピーディで使い勝手が良さそうであった。ところがである、こちらは「農業振興地域内」の耕作放棄地を使った場合という条件がついている。ボクは谷津田は振興地域に含まれていると思っていたのだが(普通は将来宅地として転用してもいいエリアを農業振興法から除外するという形だから)山あいの谷津田など条件の悪い田畑(特に機械が入らないような)は市の農振地域からはずれていたのである。それでこちらの制度も使えそうもなく、残念なことでした。
 そうか、あそこはもはや農地としてさえ見捨てられていたのか、とつくづく思い至った次第。むろん地目は未だに農地であるから農地法の規制は受けている。しかし農業振興地域から除外するというのはそこはもはや農地とは見なさないということである。だから農道も直さないし、むろん圃場整備事業などもやらない、捨て置く、そういうことである。
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 数日前「開拓団」の人たちと数人で現地確認に行った。すでに何度か見ていたのだが、そこに足を踏み入れ向こう側の端に行こうとして果たせなかった。アシ(ヨシ?)はともかくイバラが服や肌を傷つけシノダケが立ちふさがりという具合で、今更ながら「手強そう!」と少し弱気になってしまった。田を30年も放置するとこうなるのか。その上の方にも田は続いていてそこはもはや篠竹が密生していて足の踏み入れようもないが、「それ以前から作っていなかった」ということであるから減反政策の始った1970年代にいち早く放棄されたのであろう。

 見捨てられた土地、棄地。考えてみると、国土の中でこれほど無用で完璧に捨てられた土地はない。谷津田は山あいの湿地なので宅地にはならない。畑にもならない。山のように植林もできない。田んぼとしてしか使いようない土地を田んぼとして使わないとなれば永遠に棄てられたということである。自然の営みに還りつつある土地。こんな谷津田が「やさと」(石岡市)には無数にある。筑波山系に囲まれ、また丘陵地と低地が入り混じる土地柄なので、低地(沖積平野)と台地(洪積台地)の接触面は至るところ小谷津田となる。幹線道路を走っていると圃場整備された美田しか目に入らないが、一歩山あいに足を踏み込めば至るところ放棄された小谷津田である。日本全国どれだけの谷津田が放棄されているだろう!

 ボクは廃墟マニアではないが、谷津田には不思議と惹かれるものがある。日本の原風景などと言う気はないが山と水と人の出会う場所、そんなところである。そんなところを今更手をつけてどうだというのだ。そこを言葉で言うのは難しい。谷津田再開拓は農業というよりむしろ考古学に似ているかもしれない。草やシノや木を刈り、道や畦や水路の原状を確認し、クワを入れ田を作っていく。それは「1965年以前の」日本人がどのようなココロでこの列島で暮らしていたか体で知ることである。更には遠く古代にここを拓いた人々につながることでもある。(実際、知人によれば今度借りることになった谷津田の脇には古代道が通り、中世にはこの谷津田は戦場となったことがあるそうだ。(古戦場)、また谷津田入口では奈良時代末から平安初頭の須恵器窯が発見されていて、当地が古代から重要な場所だったことを示している。)谷津田開拓は米作りというより、山や水という自然、昔の人々の暮らし、その場所に刻まれた長い歴史と出会う旅なのである。S

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by kurashilabo | 2015-02-07 12:16 | 鈴木ふみきのコラム | Comments(0)